AI活用2026-02-14・ 読了 6

AIに頼りすぎると提案が「みんな同じ」になる ─ B2B営業でAIを差別化に使わない方法

酒井 秀樹
酒井 秀樹
代表取締役 / B2Bセールスコンサルタント
AIに頼りすぎると提案が「みんな同じ」になる ─ B2B営業でAIを差別化に使わない方法

この記事で得られること

  • AI提案が「似たり寄ったり」になる構造的な理由がわかる
  • B2B営業でAIが効果を発揮する領域と限界がわかる
  • 「AIの効率化 × 人間のクリエイティビティ」を実現する具体的な使い分けがわかる
  • BECQAフレームワークにおけるAI活用のベストプラクティスがわかる

「どの会社の提案も似たり寄ったりなんだよね」

ある顧客企業の役員から聞いた言葉です。

この言葉を聞いたとき、私は衝撃を受けました。同時に「やっぱりそうか」とも思いました。

今、B2B営業の世界ではAIの活用が急速に進んでいます。企業分析、提案書の作成、ミーティングの要約、フォローアップメール ── ありとあらゆる営業プロセスにAIが入り込んでいる。

これ自体は素晴らしいことです。しかし、落とし穴があります。

みんなが同じようにAIで提案書を作れば、出てくるものも似てくる。 これは当然のことです。

AI提案が「みんな同じ」になる理由

同じインプットから同じアウトプットが出る

AIは与えられた情報をベースに最適化されたアウトプットを出します。営業がAIに「○○業界の課題と解決策を提案書にまとめて」と指示すれば、同じ業界の同じ課題に対して、驚くほど似たような提案書が生成されます。

これは AIの能力が低いのではなく、AIの性質上避けられないことです。AIは「正解に近いもの」を出すのが得意ですが、「正解から外れた独創的なもの」を生み出すのは苦手です。

差別化のポイントがAI化されている

もう一つの問題は、これまで営業の差別化要因だった「情報量」や「分析力」がAIでコモディティ化していることです。

以前なら「この営業は業界に詳しい」「分析が深い」が競合との差別化になりました。しかし今は、誰でもAIを使えば同じレベルの情報と分析が手に入ります。

AIが得意なことで差別化しようとするのは、AIが普及すればするほど困難になる。

BECQAにおけるAI活用の「正しい領域」

私はBECQAトレーニングの中で、AIを積極的に活用しています。ただし「どこに使うか」を明確に区分けしています。

AIが得意な領域(=効率化に使う)

B(Business Understanding)での活用:

  • 企業の財務データの分析と要約
  • 業界動向レポートの整理
  • 競合他社の動きのリサーチ
  • 公開情報からの課題仮説の下書き

C(Close Plan)での活用:

  • タイムラインの可視化
  • リスク要因の洗い出し
  • 過去の類似案件データの参照

Q(Question)での活用:

  • 質問リストのブレインストーミング
  • ミーティングメモの整理と次アクションの抽出
  • 議事録から合意事項の抽出

日常業務での活用:

  • メールのドラフト作成
  • 社内レポートの下書き
  • プレゼン資料のアウトライン作成

AIでは代替できない領域(=人間が考える)

「この顧客の本当の痛みは何か」

AIは公開情報から一般的な業界課題を導けます。しかし、目の前の顧客が本当に困っていること、表に出さない本音、組織の力学から生まれる課題 ── これらは30年の経験があっても、毎回真剣に考えなければならない領域です。

「どんなストーリーで提案すれば、イネーブラーが社内で動きやすくなるか」

提案の「ストーリー」は、データの羅列では作れません。顧客の社内事情を理解し、イネーブラーの立場に立って、経営層に響く論理を組み立てる。この「ストーリーテリング」は、人間の共感力と経験に基づく領域です。

「競合と何が違うのか」を顧客の文脈で語る

自社の差別化ポイントを顧客の具体的な文脈に落とし込む作業。これはテンプレートではできません。

AIを「正しく」使い分けるための4つの原則

原則1:お客様の環境に合わせたAIを使う

BECQAトレーニングでは、「このAIを使え」ではなく、顧客が実際に業務で使えるツールで効率化することを推奨しています。

営業がClaude AIを使いこなしていても、顧客がMicrosoft 365環境であればCopilotの話をした方が刺さる。顧客の環境に合わせてAIを語れるかどうかが、信頼性の分かれ目です。

原則2:AIのアウトプットは「下書き」として扱う

AIが生成した企業分析や提案の骨子は、あくまで出発点です。そこに自分の経験、顧客との対話から得た情報、独自の視点を加えてはじめて「差別化された提案」になります。

原則3:「効率化」と「差別化」を混同しない

AIは「効率化」の道具であって「差別化」の道具ではない。リサーチ、データ整理、文書作成はAIに任せる。戦略、ストーリー、関係構築は人間がやる。この線引きを明確にする。

原則4:使うAIは一つに限定しない

目的に合わせて最適なAIツールを使い分けます。企業分析にはClaude、データ可視化にはCopilot、画像生成にはGemini ── 用途に応じた使い分けが、AI活用の質を上げます。

これからのB2B営業は「人間のクリエイティビティ × AIの効率化」

AI時代のB2B営業で勝つための公式は明確です。

人間のクリエイティビティ × AIの効率化 = 差別化された営業力

AIにデータ処理を任せることで、人間は「考える時間」を確保できる。その考える時間を、顧客の本質的な課題を理解すること、独自のストーリーを構築すること、信頼関係を深めることに使う。

この融合ができるかどうかが、これからのB2B営業の分かれ目になると確信しています。

まとめ

AIがB2B営業を変えているのは間違いありません。しかし、AIに頼りすぎると「どの会社の提案も同じ」になるリスクがあります。

差別化の鍵は、AIを効率化に使いつつ、人間にしかできない「ストーリーテリング」「顧客の本音への共感」「独自の視点」に時間とエネルギーを集中させること。

AIは「何をするか」の効率を上げてくれますが、「なぜそうするか」のストーリーは人間にしか作れません。

次のステップ

BECQAフレームワークにおけるAI活用の具体的手法について知りたい方は、BECQAフレームワーク入門をご覧ください。

AI時代の営業力を組織全体で底上げしたい方は、BECQAトレーニングサービスのページをご確認ください。

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酒井 秀樹
酒井 秀樹
代表取締役 / B2Bセールスコンサルタント

大学卒業後、日本総研に入社。その後、SAP、Adobe、Qlik、Sitecore、Tealiumをはじめとする各分野のリーダー企業で30年以上にわたり、カントリーマネージャー、セールスディレクター等を歴任。その豊富な経験を生かし、セールストレックを創業。BECQAフレームワークを開発。

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