営業手法2026-02-14・ 読了 6

クローズプランのない案件は案件ではない ─ 成約率を劇的に上げる「地図」の作り方

酒井 秀樹
酒井 秀樹
代表取締役 / B2Bセールスコンサルタント
クローズプランのない案件は案件ではない ─ 成約率を劇的に上げる「地図」の作り方

この記事で得られること

  • クローズプランが成約率に与える具体的なインパクトがわかる
  • 顧客と一緒に作る「Mutual Action Plan」の実践的な作り方がわかる
  • クローズプランに含めるべき7つの要素がわかる
  • 運任せの営業から予測可能な営業へ転換する方法がわかる

「きちんとしたディールは、プランもちゃんと決まっているんだぜ」

この言葉を教えてくれたのは、SAP時代の社長ロバート・エンスリン(現Workday社プレジデント)でした。

当時、私はSAPジャパンの全社フォーキャストミーティングのファシリテーションを担当していました。毎週行われるセクターヘッドとのミーティングで、ロブが必ず確認していたのがクローズプランです。

「この案件のクローズプランは?」「顧客側のタイムラインは?」「次のマイルストーンは何か?」

ある日、ミーティング後にロブがこう言いました。

「A deal without a Close Plan is not a deal.(クローズプランのない案件は案件ではない)」

この一言が、私の営業スタイルを根本から変えました。

なぜクローズプランがないと負けるのか

営業の最大の敵は「曖昧さ」

多くのB2B営業チームが抱える最大の問題は「見込みの曖昧さ」です。

「感触は良い」「前向きに検討してくれている」「来月には決まるかもしれない」── こうした曖昧な状況報告が毎週のパイプラインレビューで繰り返されます。

しかし蓋を開けてみると、顧客側では何も進んでいない。予算承認プロセスは始まっていない。競合他社が別ルートで入り込んでいる。そして「今回は見送りで」という連絡が来る。

クローズプランがない案件は、営業がコントロールしていない案件です。コントロールしていない案件は、運に左右されます。

データが示すクローズプランの効果

グローバルのセールスデータによると、Mutual Action Planを活用している企業は、未使用の企業と比較して成約率が13〜31%向上しています。

これは「あると良い」レベルの話ではありません。クローズプランの有無で、チーム全体の売上が大きく変わるということです。

クローズプランとは何か ── Mutual Action Planの本質

「売り手の計画」ではなく「顧客との共同計画」

クローズプランで最も重要なポイントは、顧客と一緒に作るということです。

営業側だけが持っているスケジュールは、クローズプランではありません。それは希望的観測です。

顧客がクローズプランを「自分の計画」として認識しているかどうか。この一点が、成約率を分けます。

今では「Mutual Action Plan(MAP)」という名称で広く使われていますが、本質は30年前と変わりません。顧客と営業が同じ地図を見て、同じゴールに向かって一緒に歩くということです。

クローズプランに含めるべき7つの要素

30年の経験から、効果的なクローズプランには以下の要素が必要です。

1. ゴール(Go-Live日)

顧客がソリューションを稼働させたい日付。「契約日」ではなく「稼働開始日」から逆算する。

2. 意思決定プロセス

稟議のステップ、関与する部門、承認者のリスト。特に日本企業では「誰のハンコが必要か」を具体的に把握する。

3. 予算サイクル

顧客の予算承認タイミング。年度予算か、都度申請か。予算の確保状況を明確にする。

4. マイルストーン

PoC(概念実証)、技術評価、経営層プレゼン、最終承認など、主要なイベントとその日程。

5. 担当者と役割

顧客側:イネーブラー、技術評価者、予算承認者、最終決裁者 営業側:アカウント担当、ソリューションエンジニア、マネジメント

6. リスクと対策

想定されるブロッカー(競合の存在、予算凍結、組織変更など)と、それぞれの対策。

7. 次のアクション

「誰が」「いつまでに」「何をするか」。これが常に明確であること。

クローズプランの作り方 ── 実践3ステップ

ステップ1:顧客との初期合意

商談の比較的早い段階で、イネーブラーにこう提案します。

「御社の検討プロセスに合わせて、一緒にスケジュールを作りませんか?お互いの時間を無駄にしないために」

この「お互いの時間を無駄にしない」という切り口が重要です。クローズプランは営業のためではなく、顧客のためでもあるからです。

ステップ2:ドキュメント化と共有

1ページ(あるいはスプレッドシート1枚)にまとめ、顧客と共有します。デジタルツール(Notion、Google Docs、自社CRM)でも良いですが、顧客がアクセスしやすい形式であることが大切です。

ステップ3:定期的なレビューと更新

クローズプランは「作って終わり」ではありません。毎回のミーティングで進捗を確認し、必要に応じて更新します。

SAP時代にロブから学んだもう一つの教訓があります。

「営業の仕事は、決められた数字を決められた日に持ってくること」

クローズプランは、その「決められた日」に持ってくるための地図です。

まとめ

クローズプランのない案件は、コントロール不能な案件です。運に左右される営業から、予測可能な営業へ転換するためには、顧客と一緒に作るMutual Action Plan(クローズプラン)が不可欠です。

重要なのは、これが「営業の管理ツール」ではなく「顧客との共同計画」であること。顧客が「自分の計画」として認識するクローズプランは、成約率を13〜31%改善するという実績があります。

30年前にSAPで学んだ原則は、今も色褪せません。「A deal without a Close Plan is not a deal.」

次のステップ

クローズプランはBECQAフレームワークの「C(Close Plan)」にあたります。BECQAの全体像はBECQAフレームワーク入門をご覧ください。

クローズプランの作成・運用に関するトレーニングをご希望の方は、BECQAトレーニングサービスをご確認ください。

シェア:
酒井 秀樹
酒井 秀樹
代表取締役 / B2Bセールスコンサルタント

大学卒業後、日本総研に入社。その後、SAP、Adobe、Qlik、Sitecore、Tealiumをはじめとする各分野のリーダー企業で30年以上にわたり、カントリーマネージャー、セールスディレクター等を歴任。その豊富な経験を生かし、セールストレックを創業。BECQAフレームワークを開発。

LinkedIn

営業力を診断してみませんか?

10問の質問に答えるだけで、あなたの営業タイプがわかります

営業力を診断する

営業プログラム・コンサルティングのご相談

BECQAフレームワークを活用したトレーニングプログラムについて、お気軽にお問い合わせください

まずは相談する