「予算が取れました!」——この連絡で、ほっとしていませんか
お客様から「予算が承認されました」という連絡が入る。
その瞬間、営業担当者の多くはほっとする。「よし、このままいけば決まる」という安堵が広がる。
実は昔の私もそうだった。予算を取るまでのプロセスがいかに大変かを知っているからこそ、その一報は「ホッとした」感覚を生む。
でも、これは間違いだった。
予算を獲得した後に、お客様の会社の中で何が起きているか。「さあ、このベンダーから買おう」とはならない。全く別のフェーズが、静かに始まっている。
予算執行プロセスとは何か
「予算執行プロセス」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
シンプルに言うと、「予算が確保された後、実際に購買に至るまでの社内手続きのプロセス」だ。
多くの企業では、お金が使えるようになった後、すぐに特定のベンダーと契約できるわけではない。購買コンプライアンス——購買に関する社内ルールが適用される。複数製品を並べて比較し、コスト対効果を検証し、製品選定のプロセスを経て、最終承認を取る。そういうフェーズが発動する。
ここには、見落としがちな重要なことがある。
いくら担当者レベルでの関係が良好でも、いくら提案内容に自信があっても、このプロセスを通過しない限り契約には至らない。そして、このプロセスの中では、必ず「競合との比較」が行われる。
ここが見えていない営業担当者は多い
「予算が取れた」という朗報を聞いて、ほっと一息ついてしまう。
でも、そこで一息ついている間に、コンペ他社が着々と動いていたりする。
お客様の社内では、あなたが参加していない会議が開かれている。あなたが想定していなかった反対意見が出てくる。最終承認者が「本当に必要か」と問い直す場面も生まれる。
そのどれもが、あなたの知らないところで進んでいく。
外資系で学んだこと
私が外資系IT企業でカントリーマネージャーを務めた経験の中で学んだことがある。
予算執行プロセスは、お客様の「買うための社内手続き」だ。そして営業は、選ばれることだけにフォーカスするのではなく、お客様がそのプロセスを通すための支援をすることも重視しなければならない。
具体的には、こういうことを考えるようになった。
いつ製品比較の資料が必要か。誰が最終承認者で、その人は何を重視するか。他のコンペに対して、どうベネフィットを際立たせるか。
これを意識して動けるかどうかで、予算承認後のフェーズの結果は大きく変わる。
「うちは勝てますか?」と内向きに問うことじゃない。お客様が社内で手続きを進めるために必要な情報とサポートを、適切なタイミングで提供し続けること。それが、このフェーズで信頼を積み上げ、最終的に選ばれていくための道だと思っている。
BECQAでいう「B」お客様のビジネスの理解、そして「C」——Close Planの本質
私が提唱するBECQAフレームワークの「B」はお客様の社内プロセスを理解含む、そして「C」はClose Planを指している。
よく誤解されるのだが、営業は売り込むのではなく、顧客のことをよく理解し、そして、その意思決定を伴奏することが大切だ。そして、伴奏する際の重要なツールがClose Planであり、「いつ決まりますか」と催促するようではだめだ。お客様が社内の意思決定プロセスを前に進めていくために、営業として伴走することを心がけるべきだ。
お客様の購買プロセスは、具体的にどんなステップで構成されているか。それぞれのステップで誰が何を判断するか。各ステップで必要な情報は何で、それをどのタイミングで提供するか。競合と比較される場面では、何が差別化のポイントになるか。
これらを意識的に設計できるかどうかで、予算執行フェーズの結果は大きく変わる。
「予算が取れました」は、スタートラインだ
最後にもう一度、言いたいことを整理する。
「予算が取れました」という連絡を受けた時、それは通過点だ。お客様にとっても、営業にとっても、スタートラインだ。
そこからお客様の社内では購買プロセスが動き始める。そのプロセスを把握して、必要な情報を必要なタイミングで提供できる営業担当者が、このフェーズを制する。
あなたは予算承認後、お客様の購買プロセスをどこまで把握して動けていますか?




