営業手法2026-03-11・ 読了 4

エンタープライズ営業で成約率UP|予算サイクルから見る商談優先順位の付け方

酒井 秀樹
酒井 秀樹
代表取締役 / B2Bセールスコンサルタント
エンタープライズ営業で成約率UP|予算サイクルから見る商談優先順位の付け方

エンタープライズ営業にとって一番重要なことは何か。この問いに対する答えは人によってさまざまだと思いますが、私は「予算サイクルの基本を押さえること」だと考えています。

もう少し正確に言えば、商談相手が今、予算サイクルの中のどのフェーズにいるかを把握すること。これが、案件の優先度を正しく判断し、限られた時間を最も効果的に使うための出発点になります。

「いい感じ」の商談が進まない理由

エンタープライズ営業に携わっている方なら、こんな経験があるのではないでしょうか。

リードが来て、お客様と初回ミーティングをする。相手も前のめりで話を聞いてくれて、質問も出る。「これはいい感じだな」と手応えを感じる。でも、そこから先がなかなか動かない。あるいは、急にトーンダウンしてしまう。

私は外資系IT企業でカントリーマネージャーを務めていた頃、こうしたケースを何度も見てきました。そして、多くの場合、その原因は相手の予算サイクル上の位置を正確に把握できていなかったことにありました。

「いい感じ」というのは感覚です。感覚は大事ですが、それだけでは案件の見極めにはなりません。相手がどのフェーズにいるかという事実を押さえてこそ、その「いい感じ」の意味合いが正確に理解できる。

企業の予算サイクル——2つのプロセス

企業は予算サイクルで動いています。特に高額な製品やサービスの購入には予算化が必須であり、一般的に翌会計年度に使う予算は前年度の後半には確定していきます。

この予算サイクルは、大きく2つのプロセスに分かれます。

まず予算獲得プロセス。これは、社内で課題を認識し、解決策を検討し、企画書を作成して承認を得るまでのプロセスです。部門内での予算申請から始まり、部門予算のレビュー、全社予算への組み込み、最終承認と段階を踏んでいきます。

このプロセスを社内で推進する人を、BECQAフレームワークでは「イネーブラー(企画立案者)」と呼びます。イネーブラーは、業績に貢献するための企画を立て、社内のさまざまな関係者から承認を取りつけていく人物です。

次に予算執行プロセス。予算が確保された後、その予算を使って実際にベンダーを選定し、契約に至るまでのプロセスです。情報収集、RFP(提案依頼書)、一次選考、提案、最終選考、契約と進みます。このプロセスでは、より多くの人やチームが意思決定に関わってきます。

同じ「引き合い」でも意味がまったく違う

ここが最も重要なポイントです。

予算獲得プロセスの中にいる相手からの引き合いと、予算執行プロセスに入っている相手からの引き合いでは、その意味合いがまったく異なります。

予算獲得プロセスの段階にいる相手は、まだ社内で企画を通す途中です。予算がつくかどうかも確定していない。この段階で営業がすべきことは、提案書を送ることではありません。イネーブラーが社内で承認を勝ち取るための支援——事例資料、効果データ、ROI試算のテンプレートなど、社内で戦える武器を提供することです。

一方、予算執行プロセスに入っている相手は、すでに予算がついています。本気でベンダーを選ぼうとしている段階です。ここでは、クローズプラン(契約までのロードマップ)を顧客と共有しながら、選定プロセスに合わせた動きをすることが重要になります。

予算サイクルの把握が変える「優先度判断」

予算サイクルのどこに相手がいるかを把握できていれば、営業として最も大事な「優先度判断」の精度が格段に上がります。

今年中に取れる案件なのか。来年の案件なのか。それとも、まだ予算化の話すら立っていなくて、興味本位で情報収集しているだけの段階なのか。

正直に言えば、興味本位で問い合わせてきた段階の相手に、全力で提案資料を作るのは時間の使い方として最適とは言えません。もちろん、長期的な関係構築として意味はあります。でも、四半期の数字を作らなければならない営業にとって、どの案件に時間を使うかの判断は死活問題です。

予算サイクル上の位置が分かっていれば、フォーキャストに載せるかどうか、今期のパイプラインとして管理するかどうか、リソースをどれだけ投入するかの判断が明確になります。

常に意識すること——シンプルだけど難しい

予算サイクルを意識するというのは、言葉にすればシンプルです。でも、日々の営業活動の中で常にこの視点を持ち続けることは、簡単ではありません。

目の前のお客様が前のめりで話してくれると、つい「これは行ける」と思ってしまう。その気持ちはよく分かります。でも、その瞬間にこそ「この人は予算サイクルのどこにいるのか?」と自分に問いかけてほしい。

その一つの問いが、あなたのエンタープライズ営業の精度を大きく変えるはずです。

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酒井 秀樹
酒井 秀樹
代表取締役 / B2Bセールスコンサルタント

大学卒業後、日本総研に入社。その後、SAP、Adobe、Qlik、Sitecore、Tealiumをはじめとする各分野のリーダー企業で30年以上にわたり、カントリーマネージャー、セールスディレクター等を歴任。その豊富な経験を生かし、セールストレックを創業。BECQAフレームワークを開発。

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