営業手法2026-10-20・ 読了 9分

診断型質問技法ステップ2:領域探索のサーチ質問

酒井 秀樹
酒井 秀樹
代表取締役 B2Bセールス変革アドバイザー
診断型質問技法ステップ2:領域探索のサーチ質問

診断型質問技法の全6ステップを一つずつ解説するシリーズ、今回は第2回です。

ステップ1では「お客さんがそもそも何の問題を解決したいのか」を探る質問について解説しました。問題の大枠が見えてきたら、次にやるべきことがあります。それがステップ2、「領域探索」のサーチ質問です。

外資系IT企業でのエンタープライズ営業を長年経験してきた中で、この「領域を探る」という行為を丁寧にやっているかどうかで、その後の提案の刺さり方がまるで変わる経験を何度もしました。感覚的な当たりではなく、質問を通じて根拠のある「当たり所」を見つけていく作業です。ステップ2では具体的に何をするのか、順を追って説明します。

ステップ2が必要な理由:問題は「一つの塊」ではない

顧客の問題は、たった一つの原因から来ていることはまずない。複数の要素が絡み合っている。

ステップ1で「コスト削減が課題だ」とわかったとします。では、そのコストはどこから生まれているのか。業務フローの非効率なのか、ツールが古くて手作業が多いのか、人員配置の問題なのか、外部委託費が膨らんでいるのか。原因になり得る部品が、あちこちに散らばっているはずです。

問題の「部品」を一つずつ炙り出す

ステップ2でやることは、その部品一つひとつを質問で明らかにしていくことです。「この業務の流れはどうなっていますか」「この作業は今どんなツールでやっていますか」「そこにどれくらい時間がかかっていますか」——こういった質問を重ねることで、漠然としていた問題の全体像が、少しずつ輪郭を持ち始めます。

「炙り出す」のは全部ではない

一方で、やみくもに全ての要素を掘り下げていくわけではありません。時間は限られています。そして、自分が解決できることにも限りがあります。ここにステップ2の核心があります。

サーチ質問の核心:自社が効く領域を探す

領域探索の目的は、顧客の問題全体を把握することではない。自分が売っている製品・サービスで解決できる課題がどこにあるかを見つけることです。

これを誤解している営業担当者は意外と多い。「お客さんを理解するために広く聞く」という姿勢自体は間違っていませんが、ステップ2はもう一歩具体的な意図を持った行動です。

「当たり」を探しながら聞く

お客さんの業務の中で、自社のソリューションがどの部分に効くのかを順番に確認していく。「ここは関係なさそうだ」「ここは刺さるかもしれない」という判断を、質問を重ねながら進めていくイメージです。

探偵が現場の証拠を一つひとつ確認しながら「これは関係ない、これは重要だ」と判断していく作業に近い。やみくもに証拠を集めるのではなく、仮説を持ちながら動く。その仮説が「自分の製品が効く可能性がある領域」です。

実際の商談でも、お客さんが「コスト削減が課題で」と話してくれたとき、私はすぐに全体像を把握しようとはしません。自社のソリューションが効く可能性のある領域——例えば業務フローの自動化やデータ活用の部分——を頭に置きながら、そこに向けて質問を絞り込んでいきます。この「照準を合わせながら聞く」という行為が、サーチ質問の本質です。

イネーブラーの宿題と結びつけて考える

例えば、顧客の担当者(BECQAで言うイネーブラー)がコスト削減という宿題を抱えているとします。その担当者は社内でこの問題を解決する役割を担っており、「どうすれば削減できるか」を必死に考えています。

そこで営業としてやるべきことは、「コスト削減のどの部分に自社の製品が貢献できるか」を一緒に探していくことです。担当者の宿題と、自社の解決策を結びつけるための橋渡しが、このステップ2の質問群になります。

ステップ2の終着点:複数の候補を「ハイレベル」で把握する

ステップ2が終わった時点で目指す状態は、「ここなら自社が価値を出せる」という領域の候補をいくつか見つけることです。一つに絞るのは、まだこの段階ではありません。

ここで一つに絞ろうとしてしまうと、見落としが生まれます。Aという領域だけに注目していたら、実はBという領域の方が顧客にとっての優先度が高く、そちらで提案すればもっと刺さったのに——というケースは珍しくない。

「ハイレベルで複数」という感覚

「ハイレベルで」というのは、深掘りしきらなくていい、という意味です。ステップ2では「この領域が関係しそうだ」「この部分に効く可能性がある」という粒度で十分です。精度を上げる深掘りは、次のステップ以降でやります。

複数の候補を手元に置いた状態でステップ3に進む。これがステップ2の正しい終わり方です。

候補が複数あることで見えてくるもの

候補が複数あると、次のステップで「どこが一番優先度が高いか」という会話ができるようになります。一つしか見えていない状態で深掘りしても、それが的外れだったときに立て直しが難しくなる。複数の候補を持っておくことが、商談全体の柔軟性を保つことにつながります。

ステップ2の立ち位置:全6ステップの中での役割

診断型質問技法の全体像を改めて整理しておきます。

ステップ 内容
ステップ1 顧客が解決したい問題を特定する
ステップ2 問題に関わる領域を探索し、自社製品が効く可能性のある箇所を見つける
ステップ3以降 (次回以降に解説)

ステップ1で問題の大枠を掴み、ステップ2でその問題の中に散らばる部品を質問で炙り出しながら、自社が貢献できる領域の候補を見つけていく。この2つのステップが積み重なって、初めて「どこに提案すべきか」が見えてきます。

ステップ1との違いを明確にする

ステップ1は「何を解決したいか」を把握するための質問です。問題の大きな塊を見つけることが目的でした。

ステップ2は、その塊の中に入って、「どこが具体的に効いているのか」を質問で整理していく作業です。問題の外側から内側へと視点が移動します。

ステップ3への橋渡し

次回はステップ3に進みます。ステップ2で複数の候補領域が見えてきたところで、次は「どの領域に絞り込むか」という判断に入っていきます。候補を持った状態で読んでいただけると、ステップ3の話がより具体的に理解できると思います。

ステップ2でよく起きる失敗:聞きすぎと聞かなさすぎ

サーチ質問で陥りやすいミスが2つあります。「広げすぎる」と「絞りすぎる」です。

広げすぎる失敗

自社の製品に関係のない領域まで広く質問してしまい、「この営業は何を売りたいのかわからない」という印象を与えてしまうケースです。質問の意図が見えないと、顧客は警戒します。

聞くべきことは「自社の解決策が効く可能性のある領域」に絞ること。それ以外の領域への質問は、コンサルティングであれば価値がありますが、営業の文脈では時間と信頼を消費します。

絞りすぎる失敗

逆に、最初から一つの領域だけを掘り下げてしまい、他の可能性を見落とすケースです。「この製品はここに使える」という思い込みが強すぎると、顧客が本当に困っている場所を見逃します。

私が外資系IT企業でアカウントエグゼクティブをしていた頃、「この顧客はデータ活用の部分が課題のはずだ」と思い込んで商談に臨み、実は業務フローの非効率が本丸だったことを見落としたことがあります。ステップ2での探索が浅かったことが原因でした。

バランスを保つための指針

複数の領域を「ハイレベルで」確認していく、というステップ2の定義に戻ることです。深掘りはしない。でも複数を確認する。この両立が、失敗を防ぐ最もシンプルな指針です。

よくある質問

Q. ステップ2で質問する領域は、事前に決めておくべきですか?

A. 事前にある程度の仮説は持つべきです。「自社の製品がどのような課題に効くか」を整理しておき、それを軸にしながら質問を組み立てます。ただし、仮説に縛られすぎると顧客の実態を見落とします。事前の仮説は「出発点」として持ちつつ、会話の中で柔軟に修正していく姿勢が大切です。

Q. 「領域」はどの粒度で考えれば良いですか?

A. ステップ2では「業務フロー」「人員配置」「ツール・システム」「外部委託」といった、問題を構成する大きな要素の単位で考えます。個別の業務手順や詳細の数値まで深掘りするのは、ステップ3以降の作業です。この段階では「どこが関係しそうか」という地図を描くことを優先してください。

Q. お客さんが問題の部品を自分でも整理できていない場合はどうすれば?

A. よくある状況です。むしろその場合こそ、サーチ質問が機能します。「業務の中でどこに一番時間がかかっていますか」「どこで手戻りが発生しますか」といった具体的な業務視点の質問から入ると、顧客自身が「そういえばここが…」と気づきを得るプロセスが生まれます。営業が質問を通じて顧客の思考を整理する、という状態を作れると理想的です。

Q. ステップ2でいくつの領域候補を見つければ十分ですか?

A. 特定の数字はありませんが、1つでは少なすぎます。2〜4つ程度の候補が手元にある状態でステップ3に進むのが現実的です。候補が多すぎると次のステップでの絞り込みが難しくなるため、明らかに自社の解決策が効かない領域は早い段階で除外して構いません。

Q. ステップ1とステップ2は同じ商談の中でやるべきですか?

A. 初回商談でステップ1と2の両方が進む場合もあれば、ステップ1だけで終わる場合もあります。顧客の話す量や商談の流れによります。重要なのは「ステップ1が終わらないまま2に進まない」ことです。問題の大枠が見えていない状態で領域を探っても、方向性がブレます。

関連記事 診断型質問技法ステップ1では、お客さんがそもそも何の問題を解決したいのかを探る質問について解説しています。ステップ2の前提となる内容なので、まだ読んでいない方はそちらも合わせて確認してください。

また、BECQAフレームワーク全体の構造については、診断型質問技法がどのフェーズに位置するかを整理した記事で解説しています。

このテーマについて、ポッドキャストでもさらに詳しく話しています。「領域を探索する」という行為が商談にどう効いてくるか、音声でも聞いてみてください。→ [該当エピソードへのリンク]

シェア:
酒井 秀樹
酒井 秀樹
代表取締役 B2Bセールス変革アドバイザー

IT業界36年。日本法人の代表・カントリーマネージャーとして10年。日本総研、SAP、Adobe、Qlik、Sitecore、Tealium を経て2024年7月にセールストレック株式会社を設立。現在はAIエージェントに業務を分担させて自社を運営し、AIツールを自ら開発・公開している。その実務経験をもとにBECQAフレームワークを体系化。

LinkedIn

営業力を診断してみませんか?

13問に答えるだけで、あなたの営業組織の「勝ち方の再現性」がわかります

無料で営業力を診断する(13問・約5分)

営業プログラム・コンサルティングのご相談

BECQAフレームワークを活用したトレーニングプログラムについて、お気軽にお問い合わせください

60分の無料相談を申し込む