あなたの提案は、お客様の「今」に合っていますか?
「この施策で売上が30%増えます」と自信を持って提案したのに、お客様の反応がいまいち。一方で「年間500万円のコスト削減ができます」と言った途端、お客様が前のめりになる。こんな経験はありませんか?
外資系IT企業でカントリーマネージャーを務めた30年の経験から、今日は「売上アップ提案」と「コストダウン提案」、どちらが通りやすいのか、そしてその見極め方について解説します。
企業が利益を上げる2つの方法
まず前提として、企業が利益を上げる方法はシンプルに2つしかありません。
- 売上をアップする
- コストをダウンする
つまり、私たち営業が提案する内容も、大きく分けてこの2種類に分類されます。
- お客様の売上アップに貢献する施策
- お客様のコストダウンを支援する施策
では、どちらの提案が通りやすいのでしょうか?
結論から言うと、多くの場合、特に日本企業においてはコストダウン提案の方が理解されやすいという傾向があります。
なぜ売上アップ提案は評価されにくいのか
売上アップ提案が通りにくい理由は、主に3つあります。
1. 数字が「想定値」になりがち
「この施策を実施すれば、売上が20%増えると想定されます」 「新規顧客が月10社増える見込みです」
これらはあくまでも「想定」であり「見込み」です。確実性がありません。特に日本企業は確実性を重視する傾向が強いため、「本当にそうなるのか?」という疑問が常につきまといます。
2. 効果測定が複雑
売上が実際に増えたとして、それが本当にその施策のおかげなのか、それとも市場環境の変化や他の要因によるものなのか、切り分けが難しいという問題があります。
3. 承認プロセスが長期化
不確実性が高く、効果測定も複雑なため、社内での承認プロセスが長くなりがちです。複数の部門からの承認が必要になり、最終的に決裁に至らないケースも少なくありません。
コストダウン提案の3つの強み
一方、コストダウン提案には明確な優位性があります。
1. 削減箇所が明確
「このプロセスを自動化すれば、年間500万円の人件費が削減できます」 「このシステムに切り替えれば、ライセンス費用が月30万円削減されます」
どの部分のコストが、どれだけ削減できるのかが明確です。お客様も「なるほど、確かにこの部分は無駄だ」と納得しやすくなります。
2. 効果が可視化しやすい
コスト削減の効果は数値で明確に測定できます。実施前と実施後の比較が容易で、ROI(投資対効果)の計算も簡単です。
3. 社内承認が取りやすい
効果が明確で測定可能なため、社内での承認プロセスもスムーズです。特に業績が停滞している時期や、利益重視の経営方針の下では、コストダウン施策が優先されます。
提案の成否を決める「タイミング」の見極め方
ただし、「じゃあコストダウン提案だけやればいい」というわけではありません。
重要なのはお客様の経営方針とタイミングを正確に理解することです。
経営方針が「成長・拡大」の場合
お客様の今年の経営方針が「成長・拡大」であれば、売上アップ施策に予算がつきます。新規事業への投資や、マーケティング強化に積極的な時期です。この場合、売上アップに貢献する提案が受け入れられやすくなります。
経営方針が「利益重視・効率化」の場合
一方、経営方針が「利益重視」「効率化」であれば、コストダウン施策が通りやすくなります。無駄を省き、利益率を改善することが優先されます。
業績停滞・リストラ局面の場合
業績が停滞している時期や、リストラクチャリングの局面では、コストダウン提案が圧倒的に有利です。確実に効果が見込める施策が求められます。
初回ミーティングで必ず確認すべき2つの質問
BECQAフレームワークの"B(Business)"、企業課題を理解し仮説を立てるステップで、必ず確認すべき質問があります。
質問1: 今期の経営方針で最も重視されているのは何ですか?
この質問で、お客様が「成長」を重視しているのか、「効率化」を重視しているのかが分かります。
質問2: 売上目標と利益目標、どちらがプライオリティですか?
この質問の答えで、提案の方向性が決まります。売上目標が優先されるなら売上アップ施策を、利益目標が優先されるならコストダウン施策を中心に提案を組み立てます。
まとめ:お客様の「今」を理解することから始める
売上アップ提案とコストダウン提案、どちらが良いかではありません。重要なのは、お客様の経営方針とタイミングに合わせることです。
お客様の「今」を正確に理解せずに提案しても、どんなに優れたソリューションでも刺さりません。
次回の商談では、まずお客様の経営方針を確認することから始めてみてください。その一つの質問が、提案の通過率を大きく変えるはずです。
あなたの提案は、お客様の「今」に合っていますか?




